PCI Express USB3.0 インターフェースボードの比較テスト
USB3.0をサポート★1していないマザーボードにPCI Express USB3.0インターフェースボードを増設してデータ転送速度を比較してみました。(2015/05)
比較するのは「PCI Express x1 USB3.0」および「PCI Express x4 USB3.0」のインターフェースボードとオンボードの USB2.0です。
下の画像は今回使用する ASUS製マザーボード「P5Q DELUXE」のPCIスロット部の写真です。
P5Q DELUXEの x1と x4は PCI Express 1.1 (Gen1)です。また x4のボードは写真で示している x16のスロットに挿しますがこの位置の x16スロットは 4レーンとなっています。
ちなみにグラフィックスボードが挿してあるスロットとその左側のスロットは共に PCI Express 2.0のx16ですが、グラフィックスボードが 16レーンで、左側の x16スロットは 0レーン★2です。
この様に同じ x16スロットでも帯域がマザーボードによって違うので PCI Expressを使用する時はマニュアルをよく確認してからの方が良いと思います。
下表は今回使用するマザーボードの x1とx4の転送レートです。御覧の様に x1は USB3.0の転送速度 5.0Gbpsを下回っているのが分かります。
レーン x1 | 理論値 2.5Gbps(312.5MB/s) | 実行値 2.0Gbps(250MB/s) |
---|---|---|
レーン x4 | 理論値 10.0Gbps(1.25GB/s) | 実行値 8.0Gbps(1.0GB/s) |
上表以外のレ-ン転送レートの理論値及び実行値については こちらのサイト を参照下さい
つまり「x1」において USB3.0の理論転送速度を賄うためにはマザーボード側のPCI Expressスロットは「Gen2(Generation 2)5Gbps/s」以上でなければならない訳です。
にも拘わらず商品パッケージやホームページ等の製品仕様に平気で「理論転送速度 5.0Gbps」を謳っている商品が売られているので気をつけましょう。
★1 USB3.0をサポートしているマザーボードのチップセットは Intel 7シリーズ以降です。2015年5月現在は Intel 9シリーズとなっていますがいまだ幾つかの 問題 をかかえているようです
★2 これは ATI CrossFireX用の x16スロットで、もう一枚グラフィックスボードを挿すと8レーンで動作するものです。この時もう一方の x16スロットは 16レーンではなく 8レーンとなります
今回の比較テストの結果を踏まえて、USB3.0のインターフェースボードを増設する価値があるのか無いのか、判断材料の1つになるかと思います。
- テストに使用したOS|Windows7 Profssional sp1 64bit(DSP版)
- テストに使用したデバイス|USB3.0メモリーステイック
SanDisk Extreme USB3.0 Flash Drive
主な仕様
下の画像はテストに使用した USBメモリーの写真です。
- 型番:SDCZ80-016G-X46
- 容量:16GB
- 規格:USB3.0
- Seq.read・Seq.write:190MB/s・55MB/s
- 外形寸法:70.87 x 21.34 x 11.43 mm
- 動作温度域:0℃~45℃
- 並行輸入品
テストに使用するUSB3.0メモリーについて
今回データ読込み・書込みに使用する SanDisk社製の USBメモリースティック(以降 USBメモリーと表記)です。この USBメモリーをディスクユーティリティソフト「CrystalDiskinfo」で見ると「SSD」と表示(fig1)されます。
つまりこの USBメモリーは USBインターフェースの SSD なのです。
この USBメモリーのパーティションは2つ★3で構成(fig2)されていて、第1パーティションは 10GiBのデータ保存領域となっておりファイルシステムはFAT32です。今回この第1パーティションをベンチマークテストに使用します。
残り 4.91GiBの第2パーティションには LinuxOS(Watt OS R8)をインストールしておりファイルシステムは ext4です。Windowsからこの領域は見えません。
なお、転送速度の参考としてマザーボードに実装されている USB2.0のベンチマーク(fig3)を掲載しておきます。当然ですがこの USBメモリーのポテンシャルを大きく下まわっています。
このUSBメモリーは以前 Windows機のレスキュー用にブータブルメディアとして作成していた物です。
★3(fig2)は Watt OS R8のデスクトップのスクリーンショットです。USBメモリーの容量表示が端末:16.0GB(ギガバイト)と Gparted:14.91GiB(ギビバイト)と違っているように見えますが、前者が 10進表記で後者が 2進表記と、表記方法が違うだけで容量は同じです。
PCI Express x1 USB3.0 インターフェースボード
FREEDOM と言う企画会社が取扱っていたインターフェースボードです。OEM供給元は実装基板に印刷されている番号(KBM-0802-V1.0)から Timely というメーカーのようです。
主な仕様
- 型番:FPCI-EU32
- バスインターフェース:PCI Express x1
- コントローラー: xHCI(Extensible Host Controller Interface)x 1個
- 搭載チップ:ASM1042
- ドライバ
- Asmedia 104x USB3 Controller
- DriverVer = 01/27/2011, 1.6.3.0
- Asmedia 104x USB3 Controller
- ファームウェア
- Firmware version: 不明
- USB3.0:Type-A ポートx2個
- バスパワー電源用ピンヘッダ実装
- 外形寸法:約122 x 93 x 21 mm(実測)
- 動作温度域:5~35℃
- 動作湿度域:20%~80%
- サポートOS
- Windows 7, Vista(32 and 64bit), XP(32bit), 8?製品仕様に記載なし
- 付属品:ドライバ CD
このインターフェースボードは今回使用するDSP版Windows7を購入した時付いていた物です。PCI Express x1(Gen1)なので USB3.0(5Gbps)の転送速度は物理的に出ません。
このWindows7は2年程前に手持ちのサブPC用にと思い購入したのですが、結局サブPCにインストールしたのは Linux OSと WindowsXPで、使い道がないまま現在まで保管していました。今回のテストでやっと日の目を見た訳です。
ドライバのインストール
それではインターフェースボードをマザーボードにセットして、まずはドライバのインストールです。
コントローラチップは ASMedia製の ASM1024(fig4)なのですが、このインターフェースボードに付属の CDを開く(fig5)とドライバらしきフォルダが5つ並んでいるだけでどれをインストールしたら良いのか分かりません。
商品のパッケージにもドライバに関する記述は無く、仕方がないのでフォルダを1つ1つ開いて英文の readme.txt を読んで行きました。で上から3つ目のフォルダの中に「Asmedia 104x USB3 Controller」の記述あったので一応インターネットで検索して確認した後これをインストールしました。
Windowsのデバイスマネージャーで ASMedia XHCI Controller が表示(fig6)されている事を確認します。
テスト内容と結果
では、テスト開始(fig7)です。今回2種類のテストを行いました。
1つ目はUSBメモリーの10GBのパーテイションに100MBのRead・Writeのシーケンシャルアクセス・ランダムアクセスをそれぞれ5回づつ実行しその最大値をベンチマーク結果(fig8)としています。
2つ目はUSBメモリーの10GBのパーテイションにパケット長(ファイルサイズ) 100MBのWriting・Readingに掛かった時間をベンチマーク結果(fig9赤下線部)としています。
テストの結果は、Seq.Read(シーケンシャルリード)がUSB2.0の約3.5倍の速度となりSeq.writeは SanDisk USB3.0メモリーのカタログ値(55MB/s)に迫っています。
ただし、USB3.0を2ポート同時に動作させる様な使い方をするとコントローラーは1個なので単純にこの半分の速度になります。
PCI Express 2.0 x4 USB3.0 インターフェースボード
米国 HighPoint Technologies 社製のインターフェースボードです。Raid関連のストレージやコントローラを製造販売しているメーカーです。
主な仕様
下の画像は今回購入したインターフェースボードの写真です。
- 型番: RocketU 1144C
- バスインターフェース:PCI Express 2.0 x 4
- コントローラー:xHCI 1.0(Extensible Host Controller Interface)x4個
- 搭載チップ:ASM1042A
- ドライバ
- Asmedia 104 x USB3 Controller
- DriverVer = 11 / 08 / 2012, 1.16. 4.0(付属CD)
- DriverVer = 08 / 16 / 2013, 1.16.12.0(最新版)
- Asmedia 104 x USB3 Controller
- ファームウェア
- Firmware version : 12220E
- USB3.0:Type-A ポートx4個
- 外形寸法:96 x 95 x 19 mm
- 動作温度域:5~55℃
- 動作湿度域:5%~60%
- サポートOS
- Windows server2008 , 2012 , Windows8 , 7 , Vista (32 and 64bit)
- Linux OS:Kernel 2.6.31以降
- Mac OSX 10.9以降
- 付属品:ドライバ CD
特にこのメーカーにこだわりがあった訳でもなく、x4インターフェースで 1ポート/1コントローラのものをamazonで検索したらこれが出てきました。価格も手ごろだったので新品を購入しました。
コントローラチップは ASMedia製の ASM1024A(fig10)で、4つのポートに対して4個実装されています。
ドライバのインストール
早速インターフェースボードをマザーボードにセットして、まずはドライバのインストールです。下の画像は HighPoint Technologiesのホームページのスクリーンショトです。
付属CDに RocketU 1144Cのマニュアル(User's Guide)は入っていなかったのでホームページからダウンロードしました。
また、最新のドライバもこのページからダウンロード出来ます。
今回のテストでは付属CDのドライバ(fig11)をインストールし、ファームウェアはデフォルトのままです。
Windowsのデバイスマネージャーで「ASMedia XHCI 1.0 Controller」が4つ表示(fig12)されている事を確認します。
RocketU 1144Cは仕様にもあるようにUnix系OSの Linuxや MacOSXもサポートされています。
下の画像はLinux OS(ディストリビュージョン)の Xubuntu上でドライバを確認した時のスクリーンショットです。
確認の方法は端末から
$ lspci -v
を実行します。
Linux OSのデバイスドライバは kernel(カーネル)にモジュールの形でコンパイルされているので、インストールする必要はありません。パソコンを起動しデバイスを検出するとデバイスドライバのモジュールがロードされます。
テスト内容と結果
では、テスト開始(fig13)です。今回2種類のテストを行いました。(前のセクションと同じです)
1つ目はUSBメモリーの10GBのパーテイションに100MBのRead・Writeのシーケンシャルアクセス・ランダムアクセスをそれぞれ5回づつ実行しその最大値をベンチマーク結果(fig14)としています。
2つ目はUSBメモリーの10GBのパーテイションにパケット長(ファイルサイズ) 100MBのWriting・Readingに掛かった時間をベンチマーク結果(fig15赤下線部)としています。
テストの結果は Seq.Read、Seq.write共にほぼSanDisk USB3.0メモリーのカタログ値になりました。このボードの場合USB3.0を4ポート同時に動作させる様な使い方をしてもコントローラーも4個なので転送速度は落ちません。
★PCIe USB3.0インターフェースボード「RocketU 1142A」を メインPCに増設 しました
Summary
- Testing Environment
Bench Table | LIAN LI PC-T80X TEST BENCH |
---|---|
Motherboard | ASUS P5Q DELUXE |
Test Device | SanDisk Extreme USB3.0 Flash Drive [SDCZ80-016G-X46] [Seq. Read : 190MB/s , Seq. Write : 55MB/s] |
- Tested date|May, 2015
USB2.0 [P5Q DELUXE] | Interface [M/B]: Onboard | lanes: - | Seq.Read: 34.81MB/s | Seq.Write: 30.61MB/s | Reading Time: 2.91sec | Writing Time: 6.06sec |
---|---|---|---|---|---|---|
FPCI-EU32 [FREEDOM] | Interface [M/B]: PCIE Gen1 | lanes: x1 | Seq.Read: 124.1MB/s | Seq.Write: 51.82MB/s | Reading Time: 0.86sec | Writing Time: 3.92sec |
RocketU 1144C [Highpoint] | Interface [M/B]: PCIE Gen1 | lanes: x4 | Seq.Read: 186.5MB/s | Seq.Write: 58.54MB/s | Reading Time: 0.56sec | Writing Time: 3.14sec |
こうして結果を並べて見ると、Gen1-1レーンのインターフェースボードであっても USB2.0に比べれば劇的にパフォーマンスが向上するのが分かりますね。
ただ1つ注意したいのは外付けの HDDや SSDとの相性があるようで、インターネット上では思った様な速度が出ない或いは認識しない等の問題が散見されます。
これは こちら のページで説明されているようにそもそも USBインターフェースは汎用なのでデータ保存やシステム起動には適していません。USBインターフェースの内蔵 HDDや SSDが製造販売されていない事がそれを証明しています。