Elitebook-SSD換装。BIOSバージョンアップで SATA3 - 6Gb/sへ
こちらの ページ に掲載している HP製ノートPC EliteBook 2560pのカスタマイズの続きです。
今回は HDDを SSDに換装しました。SSD導入の前に BIOSをバージョンアップ更新することにより、データ転送速度が SATA2(Serial ATA Revision 2.0)- 3Gb/s と SATA3 - 6Gb/s を選択可能になります。
下の画像は BIOS更新後の UEFI BIOS システム設定メニューです。Max SATA Speed の項目が追加されました。
もちろん換装する SSDの仕様に合わせて 6Gb/s(Gbps)を選択します。
転送速度の単位表記について | SATA-IOが発行している SATA仕様書での表記は Gb/s となっています
このページではBIOS更新とSSD換装の方法、効果など掲載しています。(2018/01)
BIOSの更新
現在の BIOSバージョンは F.22で SATA2-3Gb/sとなっています。今回は SATA3-6Gb/sがサポートされる F.28(2012年9月26日)にバージョンアップしました。
その修正内容は HP ノートブック システム BIOS アップデート の詳細によれば
- “- BIOS 電源オン機能でシステムがオフ状態から再開しない、ときどきある問題を修正します。
- - 取出ボタンを押しても、光学ドライブトレイが適切に取りだされない、ときどきある問題を修正します。
- - システムバッテリが、充電完了後で正しく充電されない、ときどきある問題を修正します。
- - Solid State Drive (SSD) システムを使用するシステムが適切にブートしない、ときどきある問題を修正します。
- - SATA ドライブの最大速度を 6.0 Gbps または 3.0 Gbpsまで設定できるF10 BIOSセットアップで、最大SATA速度オプションを実現します。”
となっていて SATA速度以外にも SSDに関することやその他の修正が入っています。しかし当方の環境ではこのような現象は起きていません。
なお2017年12月現在の最新バージョンは F.63 Rev.A(2016年10月19日)となっています。
BIOSのアップデート
アップデートの方法は以下の 2通り 通りです。
- USB メモリからアップデートする方法(FreeDOS Bootable Media)
- Windows上からアップデートする方法(HPQFlash Utility)
まず 1.のリンク先の指示どおりダウンロードした BIOSファイル F.28を Windows上で実行してアップデートプログラムを USB2.0メモリーに作成しました。
そして一旦電源OFF , USBメモリーを挿して電源ON , ブートオプションから USBデバイスを選択するもアップデートユーティリィが起動しません。F.22以降全てのバージョンで試してみたのですがどれもうまくいきませんでした。
1.の方法は 2020年12月現在、削除されています。
2.の方法は失敗するリスクが高いのであまり気が進みませんが仕方がありません。今回はじめて Windows上からのアップデートとなりましたが結果うまくいきました。
(下の画像は Widows 7デスクトップのスクリーンショットです)
Windows上から BIOSバージョンを確認するには fn + esc キーを押します。以上で BIOSアップデートの完了です。
SSDの仕様
換装した SSDは Intelの 535シリーズのバルク品です。
Intel® Solid-State Drive 535 Series 主な仕様
- モデル・フォームファクター|INTEL SSDSC2BW360H6・2.5inch 7mm
- 記憶容量|360GB(355.3GiB)
- インターフェース|Serial ATA 3.0 6Gb/s
- コンポーネント|MLC(Multi-Level Cell)
- 順次読み出し・書込み(最大値)|540 MB/s・490 MB/s
- 使用温度域|0~70℃(動作時)
- 外形寸法・重量| 厚7.0 x 長100.45 x 69.86mm・78g
- 平均故障間隔 (MTBF)|1,200,000時間
- 付属品|SPEED DEMONのステッカー
Explanation
下の画像は SSD梱包の状態(左)と 本体(右)の写真です。
今回購入したのは製品組込み用のいわゆるバルク品なので簡易包装されています。青色の化粧箱に入ったリテール(BOX)品より 25% ~ 30%くらい安値で市販されています。
自作PCでは指定部品 , 販売終了などの特別な理由がない限りバルク品を使用するのが一般的です。
SSDへ換装
既存の HDDは Windows7 , 10 , Ubuntuの 3つの OSを運用するマルチブート環境を構築 しています。そして前述のシステム BIOSの更新の後、今回行った SSD換装の手順は下記の通りです。
- 各OSに最新の更新プログラム , アプリケーションパッケージを適用する
- 各OSのバックアップイメージファイルを自宅NASに作成する
- OS以外のデータを自宅NASにバックアップする
- HDDを取外してSSDを取付ける
- SSDに各OSのバックアップイメージをレストア(復元)するパーティションを作成する
- 各OSをレストアする
- Ubuntuをレストアしたパーティションのブートレコードに GRUB2をインストールする
- SSDのマスターブートレコードにチェーンローダーをインストールする
各項目の詳細は割愛します。この内容を理解できないうちはマルチブート環境下の SSD換装には手を出さない方が無難だと思います。
下の画像は SSD換装途中の写真です。
①SSD側STAコネクタ , ②接続コネクタ , ③PC本体側コネクタ
既存のHDDを上方向に引き上げると③と②が切り離されます。②をSSDに取付けて③に挿し込みます。
HDDの状況
既存のHDDにインストールしている OSは次の 3つです。
- Windows7 Professional SP1 32-bit
- Windows10 Insider Preview Build17046 Pro 64-bit
- Ubuntu 14.04LTS 64-bit
下表は既存HDDのパーティションの状況です。
HDD・・・/dev/sda|298.09 GiB(320GB) | |
/dev/sda1 | Windows 7|70 GiB |
---|---|
/dev/sda2 | Windows 10|60 GiB |
/dev/sda3 | Ubuntu|60 GiB |
/dev/sda4 | 拡張|108.09 GiB |
/dev/sda5 | linux - swap|8 GiB |
/dev/sda6 | DATA|100.09 GiB |
1 GiB(2進表記)= 1.07374 GB(10進表記)|e.g. 298 GiB ≅ 320 GB となり実効値(2進表記)より大きい値になるため商用には GB が用いられる
下の画像は Ubuntu - GPartedのスクリーンショットです。
パーティション欄の鍵アイコンは /(ルート)にマウントされていることを示しています。パーティションの編集は出来ません。
フラグ欄の hiddenはそのパーティションは非表示であることを示しています。Ubuntuが起動すると MBMのオートマスク機能により自動的に設定されます。
Windows7が起動すれば Windows10が非表示になります。逆もまた然り。bootフラグはそのパーティションがアクティブである(OSが起動できる)ことを示しています。
使用したアプリケーションソフト
以下の 4つはマルチブート環境の構築済みの HDD , SSD換装には欠かせないアプリです。
アプリケーションソフト名 | 使用目的と使用したメディア形態 | 費用 |
---|---|---|
Acronis True Image Home 2012 Plus | イメージバックアップ| USBブータブル | 有料 |
GParted(GNOME Partition Editor) | パーティションエディタ|USBブータブル | 無料 |
Super Grub2 Disk 2.02s9 | OSブートローダー| USBブータブル | 無料 |
MBM(Multiple Boot Manager) | チェーンローダー|CDブータブル | 無料 |
何れのアプリも CD-Rまたは USBメモリーから起動するように事前に作成しておきます。動作速度は圧倒的に USBメモリーの方が速いです。
Acronis True Image Home
ライブ USBメモリーは、一旦 Acronisを Windowsにインストールし、同梱されている Acronisメディアビルダで作成します。
レストアする際に注意することは
- レストア先のパーティションはオリジナルと同じか大きいサイズにすること
- レストア実行前に必ず「セクター単位でレストアする」にチェックが入っていることを確認すること
です。1.はエラーになるだけですが 2.にチェックを入れず実行するとレストア先のパーティションテーブルが破壊されます。
拡張パーティションのイメージファイルを基本パーティションにレストアするとレストア先のパーティションテーブルが破壊されます。逆もまた然り。
破壊といっても HDD , SSDが壊れるわけではありません。再度パーティションテーブルを設定してやれば大丈夫です。
GParted
GPartedは Linuxディストリビュージョンの Debian GNU/Linuxベースのパーティションエディタです。このアプリで SSDにパーティションを作成します。手順としては
- 初期状態の SSDにパーテションテーブル msdos を設定する
- 各OS , Linux-Swap , DATA用のパーティションを作成する
で、今回は下表のようなパーティション構成にしました。容量が増えた分を /dev/sda2(Windows10)にプラスしています。
SSD・・・/dev/sda|333.5 GiB(360GB) | |
/dev/sda1 | Windows 7|70 GiB |
---|---|
/dev/sda2 | Windows 10|90 GiB |
/dev/sda3 | Ubuntu|60 GiB |
/dev/sda4 | 拡張|115.35 GiB |
/dev/sda5 | linux - swap|8 GiB |
/dev/sda6 | DATA|107.35 GiB |
下の画像は Ubuntu - GPartedのスクリーンショットです。
Super Grub2 Disk
Linux用ブートローダー GRUB2を利用して OSを起動するアプリで MBRも UEFIにも対応しています。Windowsも Ubuntuも起動できます。
使用目的は_レストアしたままの Ubuntuは起動しません。そこでこのアプリで Ubuntuを起動してデスクトップ上から自身のパーティションブートレコードに GRUB2をインストールします。
その結果次回からは通常起動するようになります。
下の画像は SSDにレストアした Ubuntuのカーネルイメージを選択(青色のハイライト部)している写真です。Enterキーを押すとブートプロセスが開始され Ubuntuが起動します。
ちなみに Windows・・・(hd1 , msdos2)は Windows10が , Windows・・・(hd1 , msdos1)は Windows7が起動します。
MBM
このアプリは SSDにインストールしている各OSのブートローダーをチェーンロードします。これが破損すると全てのOSが起動できなくなります。
作業中に誤って MBMを破損した場合に備えておきます。もしもの場合ライブCDから SSDの MBRにインストールすれば復旧できます。
SSD換装後の性能評価
換装が完了したところでその効果を評価してみました。
Windowsエクスペリエンス インデックス
評価結果は下表の通りです。
ディスクのデータ転送速度 | |
HDD | 5.9 |
---|---|
SSD | 7.9 |
下の画像は Windows7上のエクスペリエンスのスクリーンショットです。左が HDD , 右が SSDです
Crystal Disk Mark
下の画像は Windows7(左) , Windows10(右)上から実行した結果のスクリーンショットです。
シーケンシャルリードの値は ほぼカタログ値通りですがシーケンシャルライトが 50%くらいしか出ていません。原因は調査していません。
SSDの温度表示 | システムモニター Conkyの設定
現状 Ubuntuのデスクトップに常駐させているシステムモニター Conkyに SSDの温度は表示されません。そこで SSDの温度が表示されるように設定します。
温度が表示されていない原因は SSDの S.M.A.R.T情報を取得するために導入しているアプリ Hddtempのデータベースファイルに Intel SSD 535の情報がないためです。
Hddtempのデータベースファイルである hddtemp.dbに次の情報を追記すれば S.M.A.R.T情報を取得し Conkyに温度表示するようになります。
- SSDのベンダー名 | INTEL
- SSDのモデル文字列 | SSDSC2BW360H6
- S.M.A.R.T情報のフィールドID | 190
- 温度の単位(℃) | C
2.は SSDSC2BW360H601 ではないので注意
hddtemp.dbには次の様に記述します。
"INTEL SSDSC2BW360H6" 190 C "ここは好きな文言を入れる"
下の画像は実際の hddtemp.dbファイルのスクリーンショットです。
フィールドIDを調べる方法等は HP EliteBook-Ubuntu にお勧めのアプリとデスクトップ設定 のページに掲載しています。
2018年6月追記|Conkyの設定ファイル .conkyrcの構文書式がバージョン 1.10以降変更されています。以前の設定ファイルを使用すると正常に表示されません。詳細は こちらのページ へ
雑感
SSD換装後、OSの起動時間とシャットダウン時間を計ってみました。
Windows 7 Professional SP1 32-bit | 電源ON → OS選択 → ログイン画面表示まで・・・19秒 |
---|---|
Windows10 Insider Preview Pro 64-bit | 電源ON → OS選択 → ログイン画面表示まで・・・17秒 |
Ubuntu 14.04LTS 64-bit | 電源ON → OS選択 → GRUBメニュー → ログイン画面表示まで・・・20秒 |
この時間が一般的に速いのか遅いのか普通なのか分かりませんが、少なくとも HDDより格段に速くなりました。
そして何故だか Windows10だけが劇的に速くなってスプラッシュの 点々クルクルが 1回転しないうちにログイン画面が表示されます。
シャットダウンはどの OSも 3~5秒くらいで電源OFFになります。
インテル 535 シリーズ ホントの性能は?
Crystal Disk Markのシーケンシャルライトのベンチマークがカタログ値をだいぶ下回っているのが気になって調べているうちに SSD徹底比較 というサイトを見つけました。
このサイトでは SSDの特性をふまえた上で各メーカーの主要な機種、14種類の初期性能と経年性能を本格的にテストしてその結果をレーダーチャートと呼ばれる円で表現されています。
この円が真円に近く大きいほど、つまり初期性能と経年性能の差が少ない優秀な SSDであると結論づけています。そして14種類の中で最も優秀な SSDは SanDisk Extreme PROであるとの評価でした。
(下の画像は SanDisk Extreme PRO 240GB の写真です)
で Intel SSD 535においてはこの SSD徹底比較サイトでも Crystal Disk Markの結果は 14種類中の最下位でした。
ところが総合評価は
“ Extreme PROに次ぐ性能。カタログスペックだけでは性能は測れない ”
なのだそうです。これを見て一安心です。
ところで SanDisk Extreme PROは 2017年12月現在すでに生産終了し在庫のみがプレミア価格で販売されているようで Amazonでは 240GBの物が 29,000円(121円/GB)の値がついていました。
ということはコストパフォーマンスを含めた総合評価では Intel SSD 535 360GB(50円/GB)は同率最高位ということになるのかな